ふらっとつどって、きらっとする 介護事業所が地域のよりどころへ

北海道東部、太平洋沿岸にある釧路市は、道東最大の都市です。
JR釧路駅から車で15分ほど走ると、デイサービスわたすげ興津(以下、わたすげ)が見えてきます。
今回はこのわたすげで働く佐々木光枝さんにお話をお聞きしました。

温かみのある小さなデイサービス

私は、わたすげが開催したヘルパー講座の受講生として関わり始めました。
そして、ヘルパー資格を取得後、そのままわたすげで働くことになりました。2010年9月のことです。

私が入ったとき、わたすげは一軒家の小さなデイサービスでした。温かみがあり、みなさんがきめ細やかなケアをしていました。働いている人たちも無駄のない動きで、私も必死に仕事を覚えました。

旧わたすげ

気軽にふらっと来てほしい

わたすげ興津は、手狭だったこともあり、2011年、同じ興津地区に新築し、移転しました。
この建物を建てる前に地域懇談会を開きました。地域の方、20人が参加しました。
どんな施設にしたいか、みなさんのご意見を聞く中で、コミュニティスペースを作ることが決まりました。

新わたすげ

コミュニティスペースを利用して、毎月1回、民生委員の女性が中心となったサロン「ふらっとわたすげ」(以下、ふらっと)が始まりました。
ふらっとでは、手工芸や料理を中心に行っています。毎年のわたすげ祭りにも手作り品を出品します。

わたすげふれあい祭り

どんな人とも支えあって、生き生きと

わたすげがもともとあった一軒家もいろいろな形で活用しています。
わたすげ退所者などが中心となり、地域の高齢者の介護予防サロン「ほっとサロンわたすげ」(以下、ほっとサロン)を開いています。

釧路市生活福祉事務所からの就労体験ボランティアや障がい者の自立支援事業所からスタッフを受け入れています。
それが直接のきっかけとなって「どんな人とも、ともに働くことで生き生きと支えあって暮らす」ことも、わたすげの大切な思いになりました。

ひとりの少女の思いから

民生委員の河田さん

ある時、民生委員の方から小学4年生の女の子のお話を聞きました。その子は、女の子同士の輪になじめず、母親も仕事をしており、1人でいることが多いということでした。
その子に参加してほしいという思いから、独自の学習支援・地域食堂を始めたいと、地域の人たちに相談しました。

地域の協議会や、町内会、NPO、ボランティアの方々にも思いを伝えました。そして、近隣の小学校、町内会、民生委員、地域包括支援センターの協力を得て、2017年7月、「つどーれ☆わたすげ」(以下、つどーれ)が生まれたのです。

日常業務をしながらの周知活動、買い出しなどの準備は、慣れないこともありました。スタッフみんなの協力がなければできませんでした。

子どもの元気に圧倒され、つどーれが終わるころには、とても疲れてしまいます。それでも、みんなが楽しんで参加し、一人ひとりが輝ける場所になっていければと思います。
始めるきっかけとなった少女は、つどーれに毎回参加し、今では年下の子の面倒を見ています。

前職は薬局。違いは、、、

わたすげに入る以前、私は薬局で働いていました。薬局とわたすげの違いとは、雇われて働くか、そうでないかという違いだと思います。

写真右端、佐々木さん

わたすげでは、小さなことでも話し合いの場を設け、経営しています。介護の仕事以外でも他の事業所や地域と関りを持ち、みんなを巻き込んで居場所や仕事をつくっていくという、とてもやりがいのある職場です。

一人でも学びたい人のために

写真右、作間勝敏さん

ある日、教員を退職された作間勝敏さんが、わたすげに相談に来ました。
作間さんは一人の女性から相談を受けていました。その女性は、中学校で十分に学ぶことができず、読み書きが不自由でした。そのことから、大人のための塾を探していたのです。作間さんは「一人でも学びたい人のために、大人の塾をしたい!」と言いました。
私たちは、その思いに応え「ぜひ、やりましょう!」と大人の寺子屋「きらっと☆わたすげ」(以下、きらっと)を開始しました。

地域とともに生きていく

先日の地域の協議会で「買い物に困っている地域がある」「人が集まれるところが少ない」などの話が出ました。
それを受けて、「わたすげで移動販売はできないか」「地域カフェはできないか」と聞かれました。
私は、地域の方々に信頼されているからこそだ、と嬉しく思いました。

そして、ついに2019年4月、地域カフェ「茶処わたすげ」をオープンしました。初日には、社会福祉協議会会長、地域包括支援センターのセンター長、4人のご近所ボランティア、地域の方々、総勢35人が集まりました。

自分たちも含め、みんなが高齢化社会を不安なく迎えられるよう、いつまでも自分らしく輝き、地域の仲間が認め合い、助け合って、ともに住み慣れたところで暮らしていく、そんな願いに沿うぬくもりの拠点でありたいと思います。


新しい働きかた:015ケアワーカーズコープ わたすげ(北海道労働者協同組合)


◆事業内容:訪問介護、通所介護
◆所在地:北海道釧路市
2000年4月に設立。主な事業として訪問介護、通所介護を行っている。1998年、生活協同組合北海道高齢協によるヘルパー講座の修了生が地域懇談会を実施し、初代代表の葛西松子さん宅で手弁当の「わたすげハウス」(入浴と昼食提供)を始めたのが、デイサービスの始まり。同年、自費のヘルパー派遣を行ったことが、ヘルパーステーションの始まりに。わたすげは2001年に北海道労働者協同組合と組織統合した。

取材協力:ケアワーカーズコープ わたすげ
文・写真:佐々木光枝