「みんな」でチャレンジする新しい電気のかたち(後編)

ワーカーズコープ×みんな電力 提携記念トークセッション

ワーカーズコープは、「FECH自給コミュニティの創造」というコンセプトのもと、地域で必要とされる物事を自給・循環させ、次の世代も皆が安心して暮らせる「持続可能な地域づくり」を目指しています。
2019年、ワーカーズコープ連合会は、みんな電力株式会社と、自然エネルギーの普及を目的とした全面的・包括的な提携を締結しました。 去る6月5日、みんな電力本社にて、「コミュニティエネルギー」推進についての記者発表、および、世田谷区長の保坂のぶと氏とみんな電力代表取締役の大石英司氏をお招きした、記念トークセッションを開催しました。

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3 必要なのは、多様な意見を受け入れる社会のしくみ

古村伸宏 (ワーカーズコープ連合会理事長) 

古村:さて、世界ではSDGs※が言われています。先日政府主催の円卓会議に傍聴に行きましたが、依然としてプレイヤーは政府と大企業で、経済成長を目標としています。しかし経済成長のみが豊かさをもたらす、という考えは既に神話になっています。世界は、温暖化や最近だと廃プラの問題など、儲けるためにとことんやりつくした「ツケ」を、誰がどうやって解消するのかについて真剣に向き合い始めています。今日話したような世の中を実現するために、日本でどういった公共的政策や制度を整備していくべきか、という点についてお聞かせください。

※SDGs—持続可能な開発目標。2001年に策定されたミレニアム開発目標(MDGs)の後継として,2015年9月の国連サミットで採択された「持続可能な開発のための2030アジェンダ」にて記載された2016年から2030年までの国際目標。

「顔の見える仕組み」が受け入れられる

大石英司(みんな電力代表取締役)

大石社長:おそらくみんな電力も、世田谷区発でなければこうはなっていなかったと思っています。普通ベンチャー企業が自治体を訪ねても、一蹴されてしまうのが関の山です。でも世田谷区とは色々な形を経て、地域と地域がつながるのをどうやったら実現できるのかという点で、僕たちの「顔の見える仕組み」が使える、という連携に至りました。意見として取り入れていただけないと、結果的には実現はしないわけですね。

大企業と政府が上のほうで決めてしまい、あとは経済成長です、ということではなくて、もう少し多様な意見を汲み取って社会システムに入れていくことが必要です。多様性という観点で言うと、今の行政はまず「聞く耳を持つ」というところでさえも、非常に難しいと思っています。

「世田谷区じゃなければ私たちもこう成長していなかった」という話は、裏を返せば、他の自治体も同じような取り組み、幅の広い色々な多様な意見を尊重する取り組みをすれば、業界に対して新しいイノベーションを起こそうという会社が沢山でてくるかもしれません。意見を聞いて、一緒に議論していく。そういう場が必要だと思っています。

マーケットは自然エネルギーを望んでいる

古村:保坂区長、世田谷区発の先進的な取り組みをどう全国化するかという点についていかがでしょうか。

保坂区長:電力というのは国策としてできあがってきました。戦後、地域電力会社への分割があり、当初水力中心だったものを原子力へ移行しました。その国策の破綻が3.11でした。まだ破綻ということを認めない方々が経済界にも政府にもいます。でもユーザーである市民・国民は「質を問いたい」という意見が多数になってきています。生協の世論調査を区で行いましたが、値段が同じなら再生可能エネルギーを選ぶという回答が圧倒的でした。少し高くても自然エネルギーを選ぶという結果です。そういうマーケットになってきています。

国策としてのエネルギー政策に穴が空く

今の社会はほとんどのものがマーケットで決まるはずなのに、電力だけはまだ国策の檻の中にあります。だけどライフスタイルの転換と捉えて、価値の切り替えをしようとしている人たちが非常に多数になってきています。問題は再生可能エネルギーの電源がまだまだ足りないことですが、技術革新が進むと、太陽光発電以外の違った技術で小規模分散型の電源を作っていけるかもしれません。

左から、古村伸宏(ワーカーズコープ連合会理事長)、保坂のぶと(世田谷区長)、大石英司(みんな電力代表取締役)

古村:例えば教育というのも明治以来かなり画一的に国策として組まれてきました。国策としてスタンダードを決める価値観が支配的でした。でももっと多様でいい。個性的でいい。そういう意味では最も頑丈な国策としてのエネルギー政策に穴が空くということは、教育・福祉だけでなく、今常識とされているものを変えうる、転換しうる契機になると思いました。

 4 一昔前では考えられない、新しい価値観の時代

大石社長:時代の転換という意味では、昨年の12月にTBSや丸井グループなどの大手の企業と資本提携をさせていただきました。「ちょっと変えなきゃまずいのでは」と思ってきているようで、大企業も徐々に変わってきています。

また年末のTBSラジオのキャンペーンで、あえて値段の高い「顔の見える再エネ100%プラン」を出してみたんです。すると、「価値ある高い電気を買いたい」人たちがすごく反応して、そのプランが人気でした。「高い電力じゃないと周りに自慢ができないし、買っている充実感が得られない」という人たちがいたんです。電気はコモディティ※の最たるもので、どの電気でも質は変わらないわけですが、そこに意義を見出して、ある意味それをファッション的に買う人が出てきたんだな、と時代の流れを感じました。意義を見出して対価を払うというのは、電気だけでなく様々なことの突破口になると思います。これから先が楽しみですし、ポジティブに捉えています。

コモディティ 経済学において、完全または実質的な代替可能性を持つ経済的価値またはサービス。誰がそれらを生産したのかに関係なく、市場はその商品価値を同等かほぼ同じとして扱う。

保坂区長:高いプランが人気があったというお話ですが、世田谷区も再生可能エネルギー100%を始めました。電気代は高いです。少しですけどね。その高いということで区民からの苦情はほとんど届いていません。むしろ自然エネルギー100%を謳って全国の自治体に先駆けてこの価値を作っていくんだ、ということが、好感度を持って区民から受け入れられていると思っています。

電気も教育も働き方も、自分で選べる社会に

ほっとスクール希望丘(世田谷区) 出典:NPO法人東京シューレ

保坂区長:教育については、全国学習指導要領で一律に行われている一方、不登校44万人という大変な数字が出てきています。子どもの数が激減しているのに、です。私は30数年前からオルタナティブ教育に着目してきましたが、ようやく日本全国で動きが出てきました。世田谷区でも2月から公設民営のフリースクール「東京シューレ」を世田谷区教育委員会の委託で始めています。

それに対して「やりすぎである」などと言った声はありません。逆に、「1ヶ所しかないのか」という声はあります。これは「選べる」というところにポイントがあると思います。自らの個性を形成したり、求めるライフスタイルを確立したりする価値の転換のためにも、これからの社会は「選べる」幅が広がっていく必要があります。ワーカーズコープも「働き方を選ぶ・作る」という共通点があると思います。

食は健康と強く結びついていますので、食を選ぶ関心意識はこれまでも育まれてきました。アトピーの子、化学物質過敏症、残留農薬、安全な食を確保していきたいという子育て世代の願い、色々な背景があります。これと、電気や教育を選ぶという関心意識は類似したものです。そして電気も食も教育も、違う課題じゃなくて全部一つのことなんだ、というのがSDGsの発想でもあり、私たちのあるべき受け取り方なのではないかと思います。

命ある自然の下に、エネルギーがあり、人間社会がある

古村:最後になりますが、エネルギーは基本的に自然との関係抜きには成り立たないものです。太陽があってソーラーパネルですし、川に水があって水車、人間が活動できるのもエネルギーです。命ある自然が保たれて、その下にエネルギーがあり、人間社会があり、経済がある。こういった世界の捉え方こそが一番立て直すべき価値観のポイントと思うのです。こういうマインドは、実際の体験を重ねることでのみ、育まれると思います。みんな電力の「みんな」という言葉に込めた想いのようなものを、具体的にどのように、みんなの手ごたえや実感にしていくか。それを色々な生活の場面にどう広げていけるか。ワーカーズコープとして、働くことをエッセンスに入れながらこの点に取り組みたいと思っています。

大石社長:今の話を聞いて、人だけじゃなくて自然を含めた「みんな」のところに僕らも思いをはせてやらないといけない、と改めて思いました。そして「顔が見える」だけじゃなくて、自治や教育問題の解決といったところへ、今回の提携を基に踏み込みたいです。卒FITという大きな焦点がありますから、それを色々な社会的課題に対する電気の新しい使い方・利用のされ方と絡めてチャレンジしてみたいと思います。

古村:ありがとうございました。話は尽きませんが、時間ですのでこれでトークセッションを終わりにします。

みんな電力株式会社

みんな電力株式会社(東京都世田谷区)は、2011年設立。再生可能エネルギー発電所からの電力調達を主とした販売を行う新電力事業、電源開発事業等を手掛けています。再生可能エネルギー(FIT電気)の電源構成比は2018年度計画値で75%(みんな電力ホームページニュースリリースより)。再生可能エネルギー100%で企業経営を行う「RE100」への企業ニーズにも応えています。

住所 [本社]東京都世田谷区三軒茶屋2-11-22 サンタワーズセンタービル8F
電話 03-6805-2228
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