「みんな」でチャレンジする新しい電気のかたち(前編)

ワーカーズコープ×みんな電力 提携記念トークセッション

ワーカーズコープは、「FECH自給コミュニティの創造」というコンセプトのもと、地域で必要とされる物事を自給・循環させ、次の世代も皆が安心して暮らせる「持続可能な地域づくり」を目指しています。
2019年、ワーカーズコープ連合会は、みんな電力株式会社と、自然エネルギーの普及を目的とした全面的・包括的な提携を締結しました。 去る6月5日、みんな電力本社にて、「コミュニティエネルギー」推進についての記者発表、および、世田谷区長の保坂のぶと氏とみんな電力代表取締役の大石英司氏をお招きした、記念トークセッションを開催しました。
左から、古村伸宏(ワーカーズコープ連合会理事長)、保坂のぶと(世田谷区長)、大石英司(みんな電力代表取締役)

1 電気でつながれる時代がきた

古村:まず最初に、今回の提携についての想いや感想を頂きたいと思います。

大石社長:コンセントの向こうは必ずどこかの発電所につながっています。電気代が石炭・石油の発電所に支払われた後、中東の産油国に行っているかもしれません。もしくは、みなさんのふるさとの水力発電所や福島で頑張っているソーラー発電所に支払ったりすることを想像してみてください。コンセントの向こうは、必ずどこかとつながっています。

その時コンセントの向こうの顔が見えるといいですよね。そのサービスを「顔の見える電力」として提供させていただいています。

「みんな電力」という名前の「みんな」に込めた想いということに関して申し上げますと、最近まで、電気というのは一部の人が独占していた富でした。それが様々な技術革新によって誰でも作れるようになりました。そのみんなが作る電気をお互いやりとりできるようになって、誰が作った電気かを知った上で、それを売買していく。そこで新たなつながりが生まれます。みんなが作って、みんなが使うことによって、人と人とのつながりを生んでいくことができる。いろんなコミュニティが「みんな」に込められています。

エネルギーの地産地消


保坂区長:世田谷区ではこの春から、本庁舎で使っている電力を再生可能エネルギー100%に切り替えることにしました。2011年の震災直後のテーマは「どうやったら原発という制御不能な技術を早く卒業して、エネルギーを転換できるのか」ということでした。その時2つ柱を立てました。一つは地産地消です。世田谷区の建物の屋根にソーラーパネルを付ける事を推進し、これは一定程度進みました。



      

世田谷区内のソーラー発電 出典: 区営上祖師谷一丁目第二アパート1号棟、世田谷区、
クリエイティブ・コモンズ・ライセンス 表示 2.1 (https://commons.wikimedia.org/
wiki/File:Setagaya_Ward_Office_2009.jpg)

いろいろな地域の自然エネルギーを世田谷区へ

保坂区長:ただこれだけでは限界があります。風車や大規模な水力などは世田谷では作れません。でも日本全国を見渡せば、作れるところは沢山ありますよね。世田谷区は40以上の自治体と関係を持っていますので、いろいろな地域での発電を支援して、その自然エネルギーを世田谷区に持ってきたいと思っていました。そこで6年前に大石社長を含めて「新電力研究会」を立ち上げて、他の自治体・経産省・環境省・エネルギーベンチャー・大手企業・専門家を巻き込んで勉強を続けてきました。その結果、一昨年に長野県の高遠の水力発電所の電気を世田谷区の保育園で使うことができるようになりました。ようやく、橋がかかりました。

長野県の高遠の水力発電
出典: (c) Qurren, 2006. Takatō Dam (ja:高遠ダム) is a dam in Nagano, Japan.(https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Takato_Dam_discharge.jpg)

地方自治体から自然エネルギー比率を上げる

保坂区長:この分野では一旦仕組みができれば、いくらでも広げられるそうです。自治体間連携が全国で広まりつつあります。ワーカーズコープは全国で自治体との仕事を多く持ち、しかも働く人が経営する職場を多数持っています。世田谷区の経験や手法を、日本全国で奮い立たせていくということができると思います。日本は自然エネルギー後発国です。だから地方自治体が率先してエネルギー比率を上げていくという時代を作らなければいけないと思っているので、世田谷だけで孤軍奮闘するのではなく、全国に広げていきたい、と思います。

2 電気をきっかけに、豊かな社会のつながりができる

川場村の交流 出典:みんな電力(https://minden.co.jp/personal/report_category/%E7%99%BA%E9%9B%BB%E6%89%80)
みんな電力株式会社からの許可を得て使用しております

古村:ワーカーズコープとしては、エネルギーをきっかけに、例えば教育や福祉の分野とつながっていき、地域づくりという「まとまり」を作っていければいいなと思っています。これまでのご経験から「こういう分野に広がっている」「こういう分野と親和性が高い」といった事例や想いがありましたらお聞かせください。

「みんな」の電気代で子どもたちを支援する

大石社長:震災以降、誰でも電気を作れるようになりました。作っている人はそれを権利として持っているということです。ではその作った富を誰に渡すのでしょうか。「顔に見える関係」になると、自分の富をどう活かそうか、という話になってくると思うんですよね。みんな電力の例で言いますと、塾に通えないお子さん向けの進学塾や居場所づくりをやっている団体さんに、電気代の一部を支援しています。みなさんの電気代で教育機会を作っていけます。

長期的に見ると、FIT※は20年間で切れます。地域には大量に太陽光発電が増えました。将来、それは誰にでも自由に渡せる地域の富となります。自ら作り出した富を、どの社会課題解決に活かすのか。ワーカーズさんは労働を作り社会課題を解決していく団体ですから、そこに電気の富をかけあわせていくことができます。非常に整合性があると思っています。

※FITー太陽光、風力、水力、地熱、バイオマスの再生可能エネルギー源を用いて発電された電気を、国が定める価格で一定期間電気事業者が買い取ることを義務付ける制度。

「この人を助けよう」という優しい経済

古村:今のお話は「お互い様の経済」のきっかけになると思いながらお聞きしていました。「経済」と言うと、人を貶めてでも利益を上げようというベクトルが強まってきています。でも、お互い様で顔が見えていると、「この人をなんとか助けよう」という相互扶助のような優しい関係が広がっていくと思います。

大石社長:まさしくそうですね。私が始めてワーカーズコープさんの話をお聞きしたとき、「顔の見える労働関係」を作っているのだなと思いました。お互い顔が見えて働きあうという点に感銘を受けて、是非ご一緒に何かやりたいと思ったのが今回の提携のきっかけでした。

世田谷区庁舎
出典: (c) Wiiii, 2009. Setagaya Ward Office, at Setagaya-ku Tokyo Japan, design by Kunio Maekawa. (https://commons.wikimedia.org/wiki/File:Setagaya_Ward_Office_2009.jpg)

生協のやり方で電力を

古村:保坂区長の元々のご専門である教育の分野において、公設民営のフリースクールや、福祉・防災拠点などの先進的な政策を掲げていらっしゃいます。電気から出発して、どんな地域課題に波及させていくかにつきまして、世田谷区の政策の関係からお話いただければと思います。

保坂区長:先ほど触れました「新電力研究会」ですが、実は主なメンバーは生協の皆さんでした。世田谷は生協の発祥の地で、45万世帯のうち10数万世帯が生協に加盟しています。生協の原点は農薬汚染です。安全な食べ物を顔が見える関係で入手したいというところにあったわけですね。今日本でもスーパーの野菜売り場に生産者の写真が貼ってあったりします。それが当たり前のことになってきています。

それを電力でもできないだろうか、という話ですよね。これは制度的に見ると難しくて、一時期は「まったく制度としてありえない」とも言われていました。それをうまく乗り越えて、今では保育園・幼稚園に行くと「この電力は長野県の水力発電所から来ています」とプレートを掲げられるようになりました。

電気をきっかけに深まる交流

保坂区長:長野県からは電力だけでなく、積み木やお米も来ています。そして林間学校やサマーキャンプといったことを長野県側が活発に進めたいと言ってくれています。こういった取り組みをもっと進めたいと思っています。青森県弘前市や群馬県川場村でも同じように電気をきっかけにした交流が進んでいます。様々な自治体が各地と結び始めたら、いいきっかけになるのではないかと思っています。

後編に続きます

みんな電力株式会社

みんな電力株式会社(東京都世田谷区)は、2011年設立。再生可能エネルギー発電所からの電力調達を主とした販売を行う新電力事業、電源開発事業等を手掛けています。再生可能エネルギー(FIT電気)の電源構成比は2018年度計画値で75%(みんな電力ホームページニュースリリースより)。再生可能エネルギー100%で企業経営を行う「RE100」への企業ニーズにも応えています。

住所 [本社]東京都世田谷区三軒茶屋2-11-22 サンタワーズセンタービル8F
電話 03-6805-2228
URL https://minden.co.jp