大自然の中での「あそび」が子ども本来の豊かな感情を解き放つ

仙台市に位置する事業所、「けやきの杜」で働く瀬戸理音さんに、けやきの杜の活動に関して伺いました。

こどもたちをまんなかに 地域のみんながふれあう あったか交流広場

これは、仙台けやきの杜が始まったときから変わらないスローガンです。
けやきの杜がはじまったのは2008年。現在、宮城県仙台市で子育てに関する場を10か所運営しています。
私がけやきの杜で働き始めたのは2010年のことです。この9年間、こどもたちと触れ合う中で感じ続けてきたことがあります。

時間、空間、仲間、すき間

私がけやきの杜で感じたこと

  • コミュニケーションのとり方が未熟だから、トラブルが起こりやすい
  • 空気のよみかた、人との距離感に悩んでいる
  • 愛着形成ができていない
  • まわりとちがうことを「いけないこと」としてしまう
  • 体の使い方を知らなすぎてケガが多く、遊び方を知らない
  • 自己肯定感が低い
  • とっても忙しい毎日を生きている

子どもたちにとって大切なのは、「時間、空間、仲間、すき間」が保障されることです。しかし、彼らの「居場所」は大人たちの事情によって奪われているという現実がありました。
将来、この世界を担っていく子どもたちが、そのような状況に置かれていることに対して、けやきの杜で働く私たちは、とても大きな危機感を感じていました。
そんな中、子どもたちの一人ひとりが、自分らしくいることのできる居場所があったらいいなと想像してきました。子どもがありのままに表現でき、大声で叫んだり、笑ったり、泣いたりできて、遊びたいように遊ぶことができる。そして、失敗しても「大丈夫だよ」と受け入れてもらえたり、何もしないこともできる、そんな居場所です。

豊かなあそびをつくる

ワーカーズコープは、2017年、これまで子どもたちに関わる仕事に関わってきた蓄積から子育ちに関する指針をまとめました。その中で「これだ!!」と思う部分が4つありました。

ワーカーズコープの子育ち指針より

1人1人の子どもの違いや個性を尊重する

子どもの持つ育つ力を信じる

人と人との関係の基礎となる豊かな『あそび』を創造する

地域や暮らしの中にあった伝統行事や文化を継承していく

ここから生まれた取り組みが、自然体験活動です。そして、いろいろなつながりが重なり、Reborn Forest登米(ワーカーズコープの事業所)のみなさんや登米地域の方々とともに「もりの会」を結成しました。

触って、味わって、見て、聴いて

もりの会の活動場所は宮城県登米市の北東に位置する鱒淵ますぶち地区です。はじめて訪問した時、今にも山に飲み込まれてしまいそうなほどに広がっている自然に圧倒されました。私たちの求めていた環境そのものだと感じました。

この大自然や、地域の方々の「生きるための知恵」をどのようにして「あそび」として楽しむのか。また、都会で育った子どもたちが、自然の中での「不便さ」をどのように楽しむのか。毎月の会議では、あれもやりたい、これもやってあげたいと、大人たちの思いは溢れんばかりでした。子どもたちへの思いが強すぎて、詰め込み過ぎのプログラムになってしまうこともしばしばありました。

竹鉄砲づくり、間伐材の伐採見学、年輪のひみつ、山路の散策、川遊び、虫・草花さがし、柿もぎと渋抜き体験、ゲンジボタルの生息地をたどり、満天の星空をみんなで仰ぐ・・・。触ったり、味わったり、目で見て、耳で聴いて感じる。そんなことをたくさんしました。

初めて体験する時、子どもの顔はキラキラ、ぴかぴかと輝きます。そして、そこにある「関係性」も同時にまるくなるんです。同じことを経験して、同じ感情を共有することはとても大事だと思います。

子どもたちは希望そのもの

子どもたち自身が「五感」を通して体感したことは、必ず子どもたちの心と体に「記憶」として永遠に残り、「生きていく力」としてその子の「引き出し」になると信じています。子どもたちが生まれながらにしてもっていた「豊かな感情」が自然の中で解き放たれた瞬間に、たくさん立ち会うことができました。この活動がどんなに大変でも、これまで共に頑張ることができた私たちのモチベーションのすべては、ここにあります。

この春、もりの会をはじめて3年目を迎えました。これまでの取り組みは「たねまきの2年間」と考えています。3年目になる今年は「芽吹き」を楽しむ1年となりそうです。

子どもたちは今をうつす「鏡」であり、わたしたちにとっての「希望」そのものです。子どもたちが本来もっている「育つ力」をどう引き出していけるのか、関わる私たち大人が試されています。子どもたちの思いを大事に、いつまでも子どもたちと一緒に笑ったり泣いたりできる大人であることを大事にしていきたいと思います。

新しい働き方:003仙台けやきの杜地域福祉事業所

仙台市の指定管理事業を運営。児童館8館、子育て広場1館、院内保育1か所を運営。就労者数は123名(6月現在)。 事業所を立ち上げて11年目を迎える。 「子どもたちをまん中に 地域みんながふれあう あったか交流広場」をスローガンに、利用者、地域、働く者同士との「3つの協同」を大切にし、地域全体での子育てを目指して日々運営をしている。 児童館フェスタ、子育てフォーラム、自然体験活動や仙台青葉まつりのすずめ踊りなど、社会連帯活動を通して多様性を認めあえ、様々な経験やたくさんの人たちとの出会いによって「生きていく力」を育めるようなプログラムを実施している。今後は、中高生(思春期)対象の居場所づくりに取り組んでいく。

 取材協力=仙台けやきの杜地域福祉事業所
 写真・文=瀬戸理音
 協力=創造集団440Hz・シューレ大学